進め方・相談

公開日:

介護施設の土地活用で融資はどこまで組めるのか——銀行が見る4つの順番と自己資金の目安

介護施設の土地活用における融資審査のイメージ——土地の図面と事業計画書が並ぶ机

「建てたい気持ちはあるが、この歳になって何億も借りるのは、どうしても気が進まない」

土地活用のご相談で、最も多くいただくお言葉です。介護施設の土地活用は、賃料の安定性や相続税評価の圧縮といったメリットが語られる一方で、その入口にある「借入」の話だけが、いつも駆け足で通り過ぎられます。建築会社の提案書には資金計画表が1枚入っているだけ、金融機関の話は「こちらで手配します」で終わる——私自身、提案を受ける側の地主だった頃、そこが一番知りたいのに誰も教えてくれない部分でした。

この記事では、介護施設・障害者グループホームの土地活用における資金調達について、必要な自己資金の目安、金融機関が審査で見ている順番、高齢オーナーが誤解しがちな点、打診から実行までの期間を、実務の感覚のままお伝えします。数字はすべて筆者の実務上の目安であり、絶対的な基準ではありませんが、「何を確かめればいいか」の地図にはなるはずです。

創業3年・右肩上がりの事業者が、金融機関にNGと言われた話

先に、私自身が驚いた話をひとつ。

ある案件で、運営事業者の候補として、創業3年ほどで年1棟のペースで拠点を増やしている会社が挙がりました。業績は伸びており、勢いもある。私は「これなら問題ないだろう」と考えていました。ところが金融機関の回答はNG。理由は、社歴の短さと、拡大のペースそのものでした。

伸びているから安心、ではないのです。金融機関は、利益が出ているかどうかよりも、その利益が何年続いているかを見ます。そして急拡大は、成長の証ではなく「管理が追いつかないリスク」として読まれることがある。不動産の融資には長く関わってきたつもりでしたが、介護・障害福祉というジャンルでは、まだ知らないことがあると思い知らされた一件でした。

この経験が、この記事を書く動機になっています。オーナー側から見える景色と、金融機関から見える景色は、驚くほど違います。

いくら必要で、いくら自分で出すのか

まず、資金の全体像から整理します。

土地をすでにお持ちの場合、建物代金についての自己資金はゼロで組めることもあり得ます。 土地そのものが担保になるためです。とはいえ諸費用や不測の事態を考えると、総事業費の1割程度を見ておけば安全圏というのが私の感覚です。一方、土地から購入して始める場合は、2〜3割の自己資金が目安になります。代々の土地をお持ちの地主にとって、この差は決定的です。

返済期間は30年が基本です。ここで一点、実務的な注意があります。木造の建物では30年の融資を組めない金融機関があるのです。返済期間が短くなれば毎年の返済額は当然増え、事業収支は苦しくなります。なるべく30年で組める金融機関を探すことを強くおすすめします。

金利は、2026年8月時点では上昇機運のなかにあり、2%を若干下回るくらいが一つの目安です。かつての超低金利を前提にした古い試算表を見せられたら、現在の水準に引き直して再計算してください。

障害者グループホームの総事業費は5,000万〜1億円、住宅型有料老人ホームは2〜4億円。自己資金は土地があれば0〜1割、土地から購入なら2〜3割。返済期間は30年が基本、金利は2026年時点で2%を少し切る水準という目安を示した図
図:施設タイプ別の総事業費と、資金調達の共通ライン

施設の種類による違いも押さえておきましょう。住宅型有料老人ホームは最も利回りが出やすい類型ですが、総事業費は2〜4億円と大きくなります。 対して障害者グループホームは5,000万〜1億円程度。利回りは若干落ちる可能性がありますが、総事業費が小さいほうが融資は通りやすいという現実があります。「まず一歩」を踏み出す土地活用としては、規模の小ささが武器になる場面があるということです。

ただしグループホームには、資金調達の面で固有の注意点があります。運営事業者の社歴が短いことが多いのです。障害福祉の分野は新しい事業者の参入が続いており、これが後述する審査の壁になります。目安として、社歴5年以上・3期連続黒字の事業者でなければ、融資が難しくなる可能性があります。グループホームそのものの土地活用としての適性は100坪の土地でもできる障害者グループホームという選択肢で詳しく書いていますが、事業者選びが資金調達に直結するという点だけは、ここで押さえてください。

金融機関が見ているのは、実は事業計画ではない

ここからが、この記事で最もお伝えしたいことです。

オーナーが最も時間と労力をかけるのは、事業計画です。建築会社と何度も打ち合わせをし、収支のシミュレーションを作り込む。ところが金融機関が案件を見る順番は、私の実感では次のようになっています。

金融機関は土地の担保力、運営事業者の信用、オーナーの属性、事業計画の順に案件を見る。事業計画は建築費見積もりと借上家賃が決まって初めて作れるため、順番として最後になることを示した図
図:金融機関が融資審査で見る順番

第一に、土地の担保力。 そもそも路線価や固定資産税評価額などの経済的な価値があるか。ここが出発点です。同じ広さでも、不整形地や高低差のある土地は担保評価で不利になります。土地活用の可否が、活用計画の中身以前に、土地そのもので決まってしまう部分があるということです。

第二に、運営事業者の信用。 前述の通り、社歴と黒字の継続年数が見られます。冒頭のエピソードのように、伸びている会社がかえって警戒されることもあります。オーナーにとっては「賃料を払ってくれる相手」ですが、金融機関にとっては「30年の返済原資を生む主体」です。事業者の財務をどう読むかは「30年一括借り上げ」の落とし穴——運営事業者の決算書で見るべき3つの数字にまとめています。

第三に、オーナーの属性。 年齢そのものよりも、相続人がいるかどうかが実務上は重要です(後述します)。

そして最後に、事業計画。 これが、不都合な真実です。オーナーが最も心血を注ぐ部分が、審査では最後にしか効かない。理由ははっきりしていて、事業計画は建築プランと建築費の見積もりがあり、運営事業者の候補と借上家賃が決まって、初めて作れるものだからです。順番として最後になるのは、必然なのです。

裏を返せば、運営事業者が決まっていない段階で金融機関に相談に行っても、話は前に進みません。 「まず銀行に聞いてみよう」という順番は、実はいちばん遠回りです。土地・事業者・建築費——この3つが揃って、ようやく審査の土台に乗ります。

「この年齢では借りられない」は、ほとんどの場合誤解です

面談で必ずいただくご不安を、順に解いていきます。

誤解①「70代・80代では融資が組めないのでは」 土地活用の融資において、年齢はあまり関係ありません。相続人がいれば、実務上は問題にならないのが通常です。住宅ローンのように「完済時年齢」で機械的に切られるものとは、審査の性格が異なります。返済原資が給与ではなく賃料収入であり、担保となる土地と建物が残るためです。

誤解②「団体信用生命保険に入れないのでは」 住宅ローンのような団信には加入できない場合があります。ただし、同等の効果を持たせる生命保険で備えることは可能です。むしろここは設計の余地があるところで、賃料から返済した残りを保険の積立に充てるという組み方も考えられます。その保険が、将来の相続税の納税資金としての役割を持つ可能性もあります。ただし、具体的な保障設計や税務上の取り扱いは個別の状況によって大きく異なりますので、連携する税理士・保険の専門家とともに検討する領域だとお考えください。

誤解③「子どもに借金を背負わせることになるのでは」 このご不安は、本当によく理解できます。私自身、相続で不動産を受け継いだ側ですから、残されるものの重みは知っているつもりです。

実務上、相続人の方に連帯保証人になっていただくケースは多くあります。 ですから、事前の説明とご家族の理解は欠かせません。そのうえで申し上げると、賃料収入は非常に手堅い収入です。一棟貸しであれば空室リスクは事業者側が負い、毎月の賃料から返済していく資金計画になります。

見るべきは、借入の総額そのものではなく、返済したあとにきちんと手残りがあるかどうかです。そしてその手残りを脅かす最大の要因が、運営事業者の撤退や倒産です。だからこそ、事業者選定を丁寧にやることが、そのままご家族へのリスク低減になります。借金だけが残るのではなく、賃料を生む資産と、それを返していく仕組みがセットで残る——この構造をご家族に説明できるかどうかが、実際のところの分かれ目です。

なお、建築のための借入金は相続時に債務控除の対象とされ、建物は現金のままで持つよりも評価が下がる仕組みになっています。資産と負債の両面で見たときの姿は、介護施設の土地活用 完全ガイドで解説しています。個別の税額計算や特例の適用判断は連携税理士が担当しますので、試算をご希望の際はお申し付けください。

打診から実行まで半年。止まるのは、いつも同じ工程

期間感もお伝えします。金融機関への打診から融資実行まで、半年はかかるとお考えください。

そして、最も止まりやすいのは運営事業者の与信チェックの工程です。オーナー側の書類は比較的すぐ揃いますが、事業者の決算内容の確認、社歴の評価、場合によっては金融機関独自の照会が入り、ここで時間が溶けます。冒頭のようにNGが出れば、事業者選定からやり直しです。

計画開始から運営開始までのトータルでは、介護施設で1年半〜2年、規模の小さい障害者グループホームで1年〜1年半を見込む必要があり、融資はその中盤に位置します。相続対策として考える場合、この期間そのものが意味を持ちます。小規模宅地等の特例には相続開始前3年以内の新規貸付を対象外とする取り扱いがあり、さらに令和8年度税制改正で新設された、いわゆる5年ルールも2027年1月1日以後の相続・贈与から適用される見込みとされています。「思い立ってから間に合う」性質のものではないということだけ、ここでは押さえてください(通達等は未公表の部分もあり、適用関係は必ず税理士にご確認ください。2026年8月時点の情報です)。

地銀・信金・JA——どこに持ち込むか

金融機関の使い分けにも、実務上の傾向があります。

地方銀行は金利面で有利なことが多い一方、案件の規模感や実績を求められます。信用金庫は、初めての土地活用の計画では話がしやすい場面があります。地域の事情に明るく、相談段階から並走してくれるケースがあるためです。JAは、従来からのお付き合いがあれば低い金利が期待できる一方、新規の取引には消極的な傾向があります。

もう一つ、金融機関ごとの姿勢の違いよりも大きいのが、支店・担当者単位での経験の有無です。介護施設への融資は、一般的な賃貸アパートとは審査の勘所が違います。その経験がない支店に持ち込むと、悪意はなくとも話が前に進みません。同じ銀行でも、支店が変われば結論が変わることは実際にあります。

この一言が出たら、その支店では前に進みません

最後に、明日から使える判断材料を一つだけお渡しします。

面談の場で、担当者から**「介護のことはよくわからないので」**という言葉が出たら、要注意のサインです。

謙遜として出ることもありますが、多くの場合、その支店には介護施設への融資の経験がないか、そもそも積極的でないことの表れです。そこから説得や説明を重ねても、時間を費やしたわりに結論が動かないことがほとんどです。その時点で、別の金融機関を当たったほうが早い。 これは、粘るべきところと引き返すべきところを見分けるための、シンプルで実用的な線引きです。

まとめ——借りる話は、最後ではなく最初に確かめる

介護施設の土地活用における資金調達を整理します。土地をお持ちなら自己資金は0〜1割、返済は30年、金利は2%を少し切る水準(2026年8月時点)。金融機関が見るのは土地の担保力、事業者の信用、オーナーの属性、そして最後に事業計画。年齢よりも相続人の存在が実務上は重要で、不安の本質は借入額ではなく返済後の手残りです。

これらは、提案書を受け取ってから慌てて確かめることではなく、最初に押さえておくべき前提だと私は考えています。かつて提案を受ける側だった自分に、この地図を渡したかった——そういう気持ちで書きました。

当センターでは、ご紹介する運営事業者の決算内容と与信を私自身が確認したうえで、金融機関への打診まで含めた全体の設計をお手伝いしています。税効果を織り込んだ活用プランの設計を行い、個別の税額計算・適用判断は連携税理士が担当します。しつこい営業は一切いたしませんし、最適解が「建てない」ことであれば、そうお伝えします。まずは無料簡易診断から、お持ちの土地の可能性をご確認ください。


※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。具体的な税額計算・特例の適用判断は、必ず税理士にご相談ください。

この記事に関するQ&A

Q. 土地はありますが、手元の資金はほとんどありません。融資は組めますか?

組める可能性は十分にあります。土地をお持ちであれば土地が担保となるため、建物代金についての自己資金がゼロで成立することもあり得ます。ただし諸費用や不測の事態に備え、総事業費の1割程度は見ておくと安全というのが筆者の実務上の目安です。土地から購入して始める場合は2〜3割が目安になります。

Q. 70代・80代でも30年の融資は組めますか?

土地活用の融資では、年齢そのものはあまり問題になりません。相続人がいらっしゃれば実務上は成立するのが通常です。返済原資が賃料収入であり、担保となる土地・建物が残るためです。ただし相続人の方に連帯保証人になっていただくケースが多いため、ご家族への事前の説明と理解が前提になります。

Q. 金融機関への打診から融資実行まで、どのくらいかかりますか?

半年はかかるとお考えください。最も時間がかかり、止まりやすいのは運営事業者の与信チェックの工程です。また、建築プランと建築費の見積もり、運営事業者の候補と借上家賃が揃って初めて事業計画が作れるため、事業者が決まっていない段階で金融機関に相談しても話は前に進みません。

Q. 障害者グループホームと介護施設では、どちらが融資は通りやすいですか?

総事業費が小さいぶん、グループホーム(5,000万〜1億円程度)のほうが通りやすい傾向があります。ただし障害福祉分野は運営事業者の社歴が短いことが多く、社歴5年以上・3期連続黒字といった水準を満たさないと審査が難しくなる可能性があります。いずれも筆者の実務上の目安です。

「進め方・相談」の関連記事

← コラム一覧へ戻る 「進め方・相談」の記事をもっと見る →

まずは、あなたの土地の「相続税インパクト」を知ることから。

土地の所在地・おおよその面積・現況(更地/農地/駐車場など)をお送りいただくだけで、活用可能性と相続税への影響の概算を無料でご返信します。しつこい営業は一切いたしません。

まずは記事を読んでみる → コラム一覧へ