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相続税の「5年ルール」とは——2027年1月適用で「買って節税」はどう変わるか
令和8年度税制改正で、貸付用不動産の相続税評価に大きな変更が加わります。相続開始前5年以内に「対価を伴う取引」で取得・新築した貸付用不動産は、時価に近い評価になるとされています(2027年1月1日以後の相続・贈与から適用予定)。いわゆる「5年ルール」です。
先に結論を申し上げます。この改正で封じられるのは「買って節税」です。一方、長年所有する土地に建物を建てる活用は、経過措置により従来どおりの評価が維持される見込みとされています。つまり、代々土地をお持ちの地主の方にとって、この改正はむしろ追い風です。本記事では、5年ルールの中身、影響を受ける人・受けない人の線引き、そして「いつ動くべきか」の時間の逆算までをお伝えします(本記事は2026年8月時点の情報に基づきます。通達は未公表のため「見込み」を含みます)。
5年ルールとは何か——現行の「3年ルール」との関係
相続対策の時間軸には、これで2つのルールが並ぶことになります。
1つ目は現行の3年ルール。小規模宅地等の特例(貸付事業用)は、相続開始前3年以内に新たに貸付を始めた宅地には原則適用されない、というものです。こちらは現行どおり存続します。
2つ目が新設の5年ルール。相続開始前5年以内に「対価を伴う取引」で取得・新築した貸付用不動産は、従来の評価方法ではなく時価に近い評価になるとされています。適用は2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与からの予定です。
重要なのは、5年ルールが問うているのが「いつ・どうやって手に入れたか」だという点です。お金を出して買った・買って建てた不動産が対象であり、先祖代々・長年所有している土地に建物を建てる場合は、経過措置により従来の評価が維持される見込みとされています。「買って節税」は封じられ、「持っている土地を活かす」道が残る——これがこの改正の構図です。
1億円のモデル試算——「買って節税」はどう変わるのか
変化の大きさを、モデル試算で見てみます。
これまで、現金1億円で収益不動産を購入すると、相続税評価はおおむね半分の約5,000万円程度まで下がるケースが一般的でした。約5,000万円の評価圧縮ですから、相続税率40%の方なら約2,000万円の税負担差になる計算です。
改正後、この購入が5年ルールに該当すると、取得後も時価に近い評価のままとなり、この圧縮効果はほぼ見込めない形になるとされています。金融資産で不動産を買うことによる相続対策は、実質的に使えなくなる——それがこの改正のインパクトです。
※上記はモデル試算(評価が概ね半分となる収益不動産を想定した筆者の実務上の目安)です。実際の評価・税額は物件・ご状況により異なりますので、必ず税理士にご確認ください。
オーナーが誤解しがちな2つのこと
私自身、親から不動産を相続し、土地活用の提案を受ける側だった地主です。その立場もあって、この改正の話題では地主仲間やご相談者から同じ誤解を繰り返し耳にします。代表的な2つを整理します。
誤解①「建物を建てることでの節税は、もうできなくなるんでしょう?」 最も多い誤解です。封じられるのは「対価を伴う取引での取得・新築」、つまり買って手に入れるパターンです。長年所有している土地への新築は、経過措置により従来の評価が維持される見込みとされています。「もう何をやっても無駄」ではなく、「持っている土地を活かす活用だけが残る」が正しい理解です。
誤解②「贈与の『7年』の話と同じものでしょう?」 これも頻繁に混同されます。生前贈与を相続財産に持ち戻す期間が7年に延長された話(生前贈与加算)は、贈与に関する別の制度です。今回の5年ルールは「貸付用不動産の評価方法」の話であり、対象も仕組みも異なります。「3年・5年・7年」と数字が並ぶため混乱しやすいのですが、それぞれ別のルールとして押さえてください。
最も影響を受けるのは「土地を持っていない人」
影響の線引きを、実務の相談パターンで整理すると明快です。
影響が大きいのは、不動産をお持ちでなく、これから収益不動産を購入して相続対策をしたいと考えていた方です。金融資産を不動産に換えることによる評価圧縮が、5年ルールの直撃を受けます。
一方、代々土地をお持ちの地主の方への影響は限定的とされています。長年所有する土地に介護施設やグループホームを建てて貸す活用は、経過措置により従来の枠組みが維持される見込みだからです。相続対策の選択肢が「買う」から「活かす」へ絞られる分、土地を持っていること自体の価値は、むしろ相対的に高まると私は見ています。
【当事者の視点】駆け込み営業と、時間の逆算
最後に、提案を受ける側と事業を運営する側、両方を経験した立場から2つお伝えします。
1つ目は、駆け込み購入を煽る営業への注意です。 改正を控えて「今のうちに買えば間に合います」という提案は、今後増えると私は見ています。しかし適用は「2027年1月1日以後の相続・贈与」が基準です。2026年中に購入しても、それ以後に相続が発生し、取得から5年以内であれば新ルールの対象になるとされています。「年内に買えば安心」とは言い切れません。購入時期ではなく、制度の構造から判断してください。
2つ目は、時間の逆算です。 相続対策は、とにかく早いに越したことはありません。私の実務感覚では、介護施設は計画に半年〜1年、工事に8ヶ月、開設準備に2ヶ月——計画開始から実際に賃料が入るまで1年半〜2年かかります(規模の小さい障害者グループホームなら1年〜1年半)。さらに小規模宅地等の特例の3年ルールは貸付開始からの年数で見られるため、対策の効果を確実にしたい方ほど、逆算の起点は「今」になります。施設種別ごとの活用の全体像は介護施設の土地活用 完全ガイドにまとめています。
まとめ——「持っている土地」が武器になる時代へ
5年ルールは「買って節税」を封じる改正であり、長年土地をお持ちの地主の方には追い風となる見込みです。ただし通達は未公表であり、個別の適用判断・税額計算は連携税理士が担当します。当センターは、税効果を織り込んだ活用プランの設計と、財務を確認した運営事業者のご紹介でお手伝いします。お持ちの土地で何が成立するかは、無料簡易診断でご確認ください。最適解が「建てない」であれば、そのようにお伝えします。
※本記事は2026年8月時点の情報に基づいています。本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の税務相談に代わるものではありません。具体的な税額計算・特例の適用判断は、必ず税理士にご相談ください。
この記事に関するQ&A
Q. 相続税の「5年ルール」とは何ですか?いつから適用されますか?
令和8年度税制改正で新設される、貸付用不動産の評価に関するルールです。相続開始前5年以内に「対価を伴う取引」で取得・新築した貸付用不動産は、時価に近い評価になるとされています。適用は2027年(令和9年)1月1日以後の相続・贈与からの予定です。通達は未公表のため、最新の取り扱いは税理士にご確認ください。
Q. 長年持っている土地に建物を建てる場合も、5年ルールの対象になりますか?
長年所有する土地への新築は、経過措置により従来どおりの評価が維持される見込みとされています。5年ルールが封じるのは「買って節税」、つまり対価を伴う取引での取得です。代々の地主の方にとっては、「持っている土地を活かす」活用の価値がむしろ相対的に高まる改正といえます。断定はできないため、個別の適用判断は税理士にご確認ください。
Q. 贈与の「7年持ち戻し」と同じルールですか?
別の制度です。生前贈与を相続財産に加算する期間が7年に延長された話(生前贈与加算)は贈与に関するルールで、今回の5年ルールは貸付用不動産の評価方法に関するルールです。「3年・5年・7年」と数字が並ぶため混同されやすいのですが、対象も仕組みも異なります。
Q. 相続対策として土地活用を考えています。いつから動き始めるべきですか?
早いに越したことはありません。筆者の実務感覚では、計画開始から賃料発生まで、介護施設で1年半〜2年、規模の小さい障害者グループホームで1年〜1年半かかります。さらに小規模宅地等の特例には貸付開始から3年という時間のルールもあるため、効果を確実にしたい方ほど逆算の起点は「今」になります。まずは無料簡易診断で土地の可能性をご確認ください。
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